8月12日(金)、13日(土)

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充実した日になると、実はあまり日記を書こうという気にならない。今日は東京近郊に住む友人と数ヶ月ぶりに再会し、喫茶店をはしごしながら、一日中さまざまな話をしていた。半分以上「これからどうやって生きていったらいいんだろう…」みたいなことばかり話していたような気がするけれど、慣れない都会に孤独を感じていた最中、非常にありがたい時間だった。

私は頻繁に生きている意味がわからなくなる。そんなこと考えたってしょうがないと分かっていても、気がつけばすぐ「おれはなんで生きているんだろう」と考えてしまっている。生きている意味なんてない。そんなこと分かっている。あるとしたらむしろ、そっちの方がヤバイんじゃないかとすら思う。でも「生きている意味がわからない」と言いたくなる気持ちはたしかにある。どうやって生きていったらいいのか。楽しい気持ちが湧いてこないと、苦しみをどうやって耐えるかということばかり考えてしまう。

友人と別れて夜11時頃、ようやく住み込みで働くビルについた。それから久しぶりに少し絵を描いて、シャワーも浴びず、倒れこむようにしてベッドに身を伏せた。明日も明後日もバイトは休みだ。全身がだるくなるほど眠ろうと思った。何度も目が覚めては、頭の重さに任せるように枕に顔を埋めた。起きたのは昼の11時。ぼんやりとした頭でいつものようにツイッターを眺めていると、その彼のつぶやきがタイムラインを流れてきた。

そうだなぁ、と思った。今までそんなの考えたこともなかったけど、読んだ瞬間に、あぁ本当にそうだなぁ、と思った。もしかしたら、多くの人はわざわざ言葉にしなくても、きっと当たり前のようにそうやって生きているのかもしれない。私はなぜか、なんでもかんでも言葉にしないとちゃんと理解できないみたいだから、こういう風に言葉にされて、初めて納得できるところがある。もちろん、それでも私はまだ考えてしまうと思う。「もっと生きていたい」と思わせてくれるものってなんだろうとか、どうやったら出会えるんだろうとか。でもそうじゃなくて、たぶん私はもうすでに出会っていて、だからこそ今日まで生きられてきたのだと思う。この先は考えてもよくわからない。ただ寝ぼけて頭がぼんやりしているだけかもしれない。

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今日は気が向いたら、芥川賞を取った『コンビニ人間』を立ち読みするために、本屋にでも行こうと思う。そう思ったのは、先ほどまたしてもツイッターで以下の記事を見つけたからだった。

芥川賞「コンビニ人間」が面白い! デリカシーのない周囲の人々の「普通」にこだわる気持ち悪さが炸裂(キャリコネニュース)

今春、私はほとんど通ってもないのになぜか3年も在籍していた大学を、中退した。子どもの頃からなんとなく周囲とのズレを感じる日々を生きてきたつもりだったが、そのときまでまだ、自分は「普通」を装って生きていけるのではないかと思っていた。そして現に「普通」であることを装うために、私は「大学生」という身分に執拗にこだわっていた。人に会えば「バイトはしないの?」「どこに就職するの?」「やりたいことは何?」「彼女はできた?」と、私が「普通」であることを確かめるかのように、どうでもいいことばかり聞かれる。私は悩んでいた。自分でもどうすればいいかわからなかった。そして申請書に「経済的理由のため」とだけ書いて、大学を退学した。それからもう、私は「普通」ではいられなくなった。

3/3

夜8時。あれからまた8時間ほど寝てしまったことになる。イヤホンを失くしてしまって音楽を聴けないのがつらい。そんで死ぬほど腹も空いている。コンビニでイヤホンと中華丼を買い、適当な公園を見つけてあちこち蚊に刺されながら飯を食った。頑張って生きよう。

買ったばかりのイヤホンで好きな音楽を流しながら街を歩いた。少し歩くと川があった。人工物だらけだと思っていたから、少しでも自然があると気分がよくなる。川沿いを歩いていると、肩を寄せ合っていちゃいちゃしてるカップルやら、ポケモンGOをしながら煙草を吸っている小太りのおじさんやらがいた。歩道脇の植木の辺りに、人一人がすっぽり入ってしまうほど大きな鞄が落ちていると思ったら、人だった。植木の地面を掘り返しながら、顔を埋めるように丸まってしゃがみこんでいた。声をかけるべきだろうか。なにもできずに通り過ぎた。

ラクガキが沢山されているトンネルを抜けると、辺りは夜の街だった。よく見るとラブホテルなんかもあったりして、すれ違うカップルが路上で何度もキスしては抱きついている。なんなんださっきから。ツラい。トイレにも行きたくなってきたことだし、先を急ぐ。酒の匂いがする。風が涼しくて気持ちがいい。昨日から大げさなことばかり考えていたけれど、ぐっすり眠った後に見る世界は優しくて自由だった。なんだかんだ言っても一人で十分豊かな時間を過ごせるようになったなぁ。歌でも歌いながら、やっぱり今日はもう少し夜風に吹かれていよう。おやすみなさい。

《つづく》