無題

昨日から父が留守だと聞きつけて、久しぶりに祖父母の家を離れて、いつもは父が一人で住んでいる方の実家で過ごしている。が、昼寝をしたらもう夜の10時になってしまった。ここは、当然のようにWiFiもバッチリ完備されているので、布団に潜りながら思う存分ネットを使うには最高の場所なんだけど、おかげで外出しようという気が起きなくて、ひたすら屋内でダラっとした一日を過ごしてしまいやすいというデメリットがある。腹が減ってきたので、昨日買った食パンを二つトースターで焼いて、ジャムとツナマヨネーズを塗って食べた。それから、まだ腹が空いていたので、湯を沸かしてカップ麺に注ぎ、冷蔵庫に余っていた絹ごし豆腐に麺つゆをかけて食べた。

ヒマなのでテレビを付けてみる。名探偵コナンの映画が終わろうとしていた。コナンが倒壊しかかっている建物の中からサッカーボールでヘリコプターを狙っている。そばにいるスナイパーに射撃の隙を作ろうという魂胆らしい。ヘリコプターには犯人と思しき人物が乗っていて、不敵な笑い声を上げながら銃でコナンたちを狙っている。無茶だなあ、と思いながら、私はチャンネルを変えた。卓球の平野選手が世界女王を倒したらしい。ある長身の水泳選手が日本新記録を更新したらしい。私はテレビを消した。皿を洗って、自分の部屋に戻った。

本を読む気にもならないし、パソコンを開く気にもならないし、DVDを借りてくる気にもならないし、部屋を片付ける気にもならないし、散歩に出掛ける気にもならないし、ゲームをする気にもならないし、絵を書く気にもならないから、ブログを開いて、文章を書くことにした。そろそろ皆、眠りにつく頃だろうか。今日は何があったのだろう。どんな靴下を履いて、どんな昼食を食べて、どんな話をして笑い、どんなことを思い浮かべて眠りにつくのだろう。今日も一日が終わっていく。私は今日、とくに何も記憶に残ることのない、きっと後から思い出すこともない、何の変化も喜びもない、ただの一日を過ごした。これを読む人はどんな一日を過ごしたのだろう。

耳を澄ますと、部屋には蛍光灯のビーンという音が響いている。座禅をするときは聴覚に意識を集中させると良いらしいということをふと思い出した。こういうヒマなとき、どんなことをしたら楽しいのだろう、とちょっとだけ考えてみると、一度観たことのある、おじいさんが水没していく街に一人で住んでいるという短編映画のことを思い出して、ああなんか、ああいう雰囲気の作品とかってやっぱりいいよな、と思っていたら、眠くなってきた。寝る前にコンビニまで散歩して、久しぶりにお酒を飲むのもいいかもな、と少し思った。