ラーメン

午前7時14分。東京駅八重洲南口近くの鍛冶橋駐車場から24時ちょうど発の高速バスに乗って、さきほど新潟駅南口に到着した。このまま実家のある新発田まで電車に乗って帰っても良かったのだけど、昨夜夕食を食べ忘れたのと朝の新潟が意外に肌寒かったのがあいまってさっきからずっとラーメンが食べたいという思いが消えないために、しばらく近くの公園で時間を潰すことにする。店の開店時間までおそらくあと2、3時間。耐えられないほど寒いわけではないけれど、冷たい風が不快で気分が悪い。身体を温めるために買ったカップ麺もほとんど意味を成さず、数十分ほどであきらめて駅構内の待合室まで移動した。けれど、そこでも室内のもわっとした空気が気持ち悪くて長居する気が起きず、また寒さをしのげる場所を探してしばらく周辺のトイレやコンビニをウロついた。ATMで金を下ろして漫画喫茶に入り、フルフラットシートで5時間ほど仮眠をとる。時刻は午後2時6分。そろそろ目当てのラーメン屋に向かいたい。

新潟駅南口から徒歩20分ほどの場所にある店でラーメンを食べる。一週間の関東滞在を終えた今、書くべきことは他に山ほどあるはずなのに、なぜかまったく関係のないラーメンのことについて書いている自分が不思議に思える。過ぎてしまえば、楽しかった思い出も気まずかった記憶も、ほとんど今朝見た夢と変わらない。それは寂しいことだけど、でも、誰とどんな時間を過ごしたかということよりも、その時間があったおかげで、一人になったときの自分がどのように変わっているかということの方がずっと大切なような気がして、たとえ自分の頭の中にある思い出がすべて夢だったとしても、それはそれで別に構わないのかもしれないと考えてみる。午後3時58分、ラーメン屋を出る。

駅に戻ってきた。隣接する大型の書店のベンチに腰掛けて、カウンセラー・高石宏輔さんの『あなたは、なぜ、つながれないのか』を読む。東京滞在中に参加したお世話になっている人のワークショップで、発言する機会があったにも関わらず大したコメントができなかったことを思い出して、今の自分に何かしらのヒントになる参考文献はないかと脳内に検索をかけたところ、真っ先に思い当たったのがこの本だった。ただ、言うほど私は本を読むのが好きではない。すぐに飽きて音楽を聴く。これからどうしよう。パソコンのescキーがなぜか潰れて反応しづらくなっていたから、修理の見積もりを出しに電器屋に行ってもいいけど、図書館まで少し歩いて、コーヒーを飲みながら今読んでいる本を借りられないか調べてもいい。お金があれば買っていたところだったけれど、でも買ってもどうせ読まなかっただろうなあ、いつもみたいに。そうやって、知らず知らずの内にいつもみたいに動こうとしている自分自身に気が付くと、なんとなく、おれは新潟に帰ってきたんだなあ、という気がした。見知らぬ土地ではこういうわけにいかない。音楽を聴きながらトイレまで歩く。午後6時8分。 

(更新中)