さっきから真下にいる人と左下辺りにいる人が何やら話をしている。最初は英語かなあと思ったけど、ところどころで「シュ」とか「ホボゥ」とか「ティヒ」とか言っているのが聞こえるから、もしかしたらフランス語とかその辺かもしれない。まあべつになんだっていい。なんだっていいんだけど、でも、結構デカい声で話しているので気にはなる。まだ寝ないから別にいいんだけど、夜もこんな感じだったら流石に困る。今夜はしっかり寝たい。今も非常に眠い。頭もくらくらする。

 

さきほど午後七時頃、東京都内某所のドミトリー式の宿に到着した。今朝10時に新潟駅南口を出発して、新宿のバスターミナルに着いたのは午後五時。それから新宿駅付近をしばらく歩き、東京に来たときはなぜかいつも立ち寄りたくなるチェーンの天丼屋を探して夕食を済ませ、ついでに宿を予約した。宿を目指して20分ほど電車に揺られた後、駅から五分ほど歩いて目的地に着いた。久しぶりの東京だ。やはり人が多い。

 

ここしばらく屋内でじっとしていることが多かったから、体力がかなり落ちている。大して歩いてないはずなのに、身体はもうぐったりだ。疲れた。今夜は早く寝よう。フランス語がいい感じに収まってきたのでもう寝てもいいかもしれない。もうものすごく眠い。

 

今回、東京に来たのは、三か月前に「自分の連絡先を公開して、呼ばれた先で無償でお手伝いをしてくる」という無謀な企画に参加していた頃に知り合った方が「またちょっとお手伝いしてくれない?」と声を掛けてくれたからだった。手伝うのは日曜とのことなので、明日は一日東京近辺を巡りながら、時間の限り物思いに耽りたいと思う。新潟に長く居すぎてしまったので、都会の雰囲気に身体を馴染ませて、自分の中の新潟成分を薄くするための時間にしたい。

 

自分でも不思議で仕方がないのだが、私は自分から動こうとするとものすごく時間が掛かって仕方がないのだけれど、今回のように誰かに誘われたり命じられたりすると割とホイホイどこへでも付いていってしまう傾向がある。よくないなあと思う。でも、もうなんか仕方がないのかもしれないなあとも思う。自分でも自分がよくわからない。おれはなんなんだろう。

 

改めて新潟の実家に長く滞在し過ぎてしまったことを思うと、ほんとうに自分に嫌気が差してくる。三か月も無駄にしてしまった。思えばそれも自分から動くきっかけを作れなかったからじゃないか。この自分と一生付き合っていかなければならないと思うと本当に気分が滅入る。とりあえず今日のところは寝よう。

 

と、思ったけれど、せっかく遠出したのに寝てばかりいるのも惜しい気がして、しばらく辺りをウロウロしていた。眠かったけれど、幸い辺りは私好みの下町っぽい雰囲気の土地で、歩いていて心地が良かった。実家にいるよりよっぽど田舎に来ている感じがするのは、東京の方がまだ人が沢山住んでいて、昔ながらの雰囲気が残っているからだろうか。地元は散歩していてもつまらない。国道沿いのニュータウン、郊外のショッピングモール、駅前のシャッター商店街。東京の方が街角にまだ田舎っぽさが残っているような気がする。それに、雑踏に紛れられる分だけいくらか孤独が薄まる気もする。

(更新中)