#8

胃もたれの原因が分かった。きっとマクドナルドにいたせいだ。昨日も、私はマクドナルドにいた。百円でいつまでも座れて、しかもネットもタダで使えるから、どうしたって私はマックを選んでしまうのだった。水とハンバーガーを注文すると、私は二階へ上がり、電源のある座席でパソコンを開いた。向こうには、放課後にたむろする高校生男女の集団が見える。やっぱり都会の高校生は放課後にファミレスとか行ったりするんだなぁ。漫画とかではこういう光景を見たことあったけれど、おれにはそんな青春なかったぜ。騒がしいBGMと、恋愛の話で盛り上がる高校生の笑い声、それから店内に広がる鬱陶しいポテトの匂いが私を取り巻き、次第に私を内側から蝕んでいった。そしてまた、胃もたれを起こした。

 

どうなることかと思ったが、マクドナルドでの眠れぬ夜を過ごし終えた私は、ガストでの仮眠を経て、多少調子を持ち直していた。私は約束していた駅へ向かい、この日記を読んで「稲村彰人がリアルタイムで東京にいるらしい」ということを知ったらしい初対面の男性の方と顔を合わせた。いい雰囲気の喫茶店を紹介してもらい、そこで話をしながら、ゆっくりとコーヒーを飲む。SNS などで大々的に「誰か会いませんか?」とアピールしたわけでもないのに、こうして声を掛けてもらえるのは有り難かった。生きているとこういうこともある。穏やかな時間が流れた。

マックに入ったのは、その男性と別れてからだ。私は新潟へ向かう高速バスの予約をしなければならなかった。しかし、調べても調べても、最安で5000円台のバスしか見つからず、予約も日曜以降しかできそうにない。こんなことは今までになかった。私は、山崎まさよし八月のクリスマスを繰り返し耳に流して、沈みそうになる自分を支えた。そうこうしている内に、いよいよポテトの匂いに耐え切れなくなる。私は店を出た。外は雨が降っていた。私は、別れ際に教えてもらった漫画喫茶へ向かった。

 

夜が明けた。今、私は漫画喫茶を出て、近くのコンビニのトイレでこの日記を更新している。漫画喫茶に入ると、私はなんだかんだ制限時間いっぱいの12時間近く滞在してしまうので、払うお金はほとんど安いビジネスホテルかカプセルホテルと変わらなくなってしまう。そんなことだったらまだ布団で寝られる宿を予約した方が良かった、と、思わなくもない。けれども昨晩に限って、漫画喫茶に入ったのは正解だった。無限に食べられるソフトクリームと、無限に飲めるお吸い物が、意外にも私の胃の不調を回復させたからだった。それに、たとえマットであろうと十時間近くたっぷりと寝られたことで、私の調子は完全に持ち直していた。これならまだ生きていける。

 

ところで。自分がスマホに書いた文章をパソコンの画面を通して改めて読むと、違和感しか感じない。少なくとも、おおっぴらに他人に見せるものではないと思う。

おおっぴらに他人に見せても恥ずかしくないと思えるだけの文章を書かなければ、この先、自分は広がっていかないと思う。いつまでも舞台裏というか、自分にとって薬となるだけの文章を書いていても始まらない。もちろん「書きたいから書く」という気持ちがなかったら、そもそも書こうとも思わないのだが、書く以上は他者からの視線を意識しなければならない。もし自分が誰かに自分の書いた文章を読んでほしいとすれば、それは誰になるだろう。

(更新中)