#16

この一週間ほど、体調があまり優れない。最初は軽い喉の痛みからはじまって、鼻水、鼻づまり、痰、それに倦怠感。そのせいで気分が落ちているという訳ではないけれど、朝、目が覚めたときに喉の奥がヒリヒリと乾燥しているのを感じると「まだ治ってないのかよ」とうんざりした気持ちになる。でも、鼻声のときの自分の声は好きだったりする。だるさを風邪のせいにできるのもお得感があったりする。体調なんて悪くなくても基本的に毎日をイキイキと過ごしているようなタチではないから、傍目から見たら、私の雰囲気はきっとそれほど変わらないだろう。

今朝は、小学校の頃のクラスメートたちと美術館のような場所へ見学に来ている夢を見た。そこに並んでいる絵画にはどれも見たことがないほど色鮮やかな模様が描かれていて、不思議なことに、毎秒ごとに色や形が変わっていった。万華鏡を覗き込んでいるかのような美しさが、そこらじゅうを満たしていた。触れるとまた模様が変わる。私は、壁に並んだ絵や、出入り口付近に置かれた土産物に次々と手を触れながら歩き、それらが一つ一つ鮮やかに色や形を変えていくさまを楽しんで眺めていた。すると、近くで友人Mと友人Kが口論をしているのが見えた。私はそれぞれの肩を持ちながら喧嘩の仲裁に入り、そして(夢の中ではありがちなことだが)いつしか宙を浮いていた。空中で寝そべりながら、私は辺りを見渡した。外はどしゃ降りの雨が降っていた。それから友人らとともに、傘を差して美術館を出た。

深夜、何度も目を覚ました。風がごうごうと強く鳴っていた。七時半、布団から起きて台所へ向かうと、今朝出すはずのダンボールのゴミが家主の手によってすでに片付けられていた。先を越されてしまった。ゴミ当番を任されているからこの家に置かせてもらっているようなものなのに、今日は役目を果たすことができなかった、と、思いながらノソノソと布団に戻ると、またすぐに眠りに落ちた。九時半、ふたたび目を覚ますと、辺りは一転して静けさに包まれていた。時折鳴く鳥の声に混じって裏の雑木林が風でサラサラと揺れる音が聞こえてくる。私は布団から身体を起こして、パソコンを開いて日記を書いた。朝食にきな粉と蜂蜜を混ぜたヨーグルトと、昨夜作っておいたスープを温めて食べた。