7月11日(日)

今日は、電車に乗って地元の一番栄えているエリアまで足を伸ばした。今日こそは気晴らしをしなければならないと意気込んでいた。

久しぶりに来た市街地は、日曜だというのに驚くほど閑散としていた。街行く人も当たり前だけどマスク姿で、なんというか街全体から活気のようなものをまるで感じられない。ただでさえ栄えているとは言い難かった繁華街が、より一層勢いを失っているように見えた。

私はオシャレもグルメもクルマもレジャーにも基本的にはあまり興味がない方の人間だけど、それとこれとは関係なく、やっぱり街には賑わいがあってほしいし、人々には楽しそうにしていてほしい。そんなことを思った。

街を眺め、店を何回か出たり入ったりしているうちに夜になった。

 

ひとりで気の向くままにいつまでも街を歩いていられること。これは独身者の特権的な楽しみだと思う。だとすれば所帯持ちの楽しみはなんだろう。一家でクルマに乗って遠出をすること。七五三や誕生日などの行事に合わせて、子どもの成長を祝うこと。長く連れ添ったパートナーと信頼を深めていくこと。だいたいそのようなイメージ。経験がないので分からないけれど、大きく外してはいないんじゃないか。

地元に帰ってきてからというもの、自分が独身者であることを意識させられる機会が格段に増えた。地元に帰るまで、関わりのある人の中に結婚している人などほとんどいなかったので、そんなことは考えもしなかったのだった。しかし、よく考えてみれば私も二十代後半。調べによると、日本の男性の平均初婚年齢は三十歳前後ということで、現時点ではまだ私は平均以下ではあるが、地元に帰ってきてから明らかに家庭を持つ人との接点が増えたこともあって、やはり意識しないわけではない。私はいつか結婚するのだろうか。

 

欲しいモノなどとくにないが、少し気になっているものならあった。新発売のカシオの電子キーボードで、三万くらいするのだが、いつでも気軽にピアノの練習ができそうで手元にあったらいいなと思っていたのだった。現物を触って具合を確かめようと、市街地にある楽器屋へ足を運んだ。

下見に行って正解だった。キータッチが思った感じではなく、大枚を叩いてまで買うべきものとは思えなかった。

買い物は、買う前が一番楽しい。そして苦しい。インターネットの出現で、買う前に商品の下調べをするのが容易になった分だけ情報量が多くなりすぎて絞り込むのに異様に時間が掛かる。買ってもいないのに商品の知識だけが増えていき、中古品やオークション、通販サイトのタイムセールなど、おトクに買おうとすればするほど考慮しなければならない要素が無限に増えていく。しかし大抵の場合、買うべきかどうかは現物を見れば一発で分かる。だからやっぱり私はリアルで買い物する方が好き。いくらネットショッピングが充実したとしても、実店舗がなくなっては困る。